不思議でたまらない。


ボリボリと両腕をひっかいて爪に血が付いて行く。


それでも止められない。


皮膚がはがれ、白い肉が一瞬だけ見えて、そこもまた血で滲んで行く。


そんな事を繰り返していると、「サナギ?」と、あたしを呼ぶ京介の声が外から聞こえて来た。


ハッとして手を止める。


しかし、まだかゆみは続いている。


あたしはトイレのドアを少しだけ開けて廊下に顔だけを出した。


「京介」


「あぁ、なんだトイレにいたのか」


「うん」


「克哉、しばらく入院することになった」


「……うん」


あたしは頷く。


辛いけど、わかっていた事だった。


「俺たちに出来る事はもうないから、今日は帰るけど……」


「うん。あたしもすぐに帰る。ちょっとお腹の調子が悪いから、京介は先に帰ってて」


「大丈夫か?」


「大丈夫だよ。晩ご飯を食べ過ぎただけだから」


そう言うと、京介は先に帰って行った。