「信じられないな。いくら言っても右から左に聞き流すような克哉が、いきなり素直に俺たちの言葉に従うなんて」


左右に首をふってそう言う京介。


「あたしも、おかしいと思ってる。だけど、真尋は克哉を変えてしまったことを気にして、別れる事を考えてるみたいなの」


「まじかよ……」


京介は眉間に眉を寄せて前髪をかき上げた。


汗の粒が1つ、床に落ちていく。


「克哉が練習にすりし過ぎないように、京介から言ってほしい」


あたしから言っても効果は薄いだろうし、真尋はもう別れる気でいる。


このままじゃ克哉はいくら頑張っても空回りを続けるだけだ。


「散々頑張れって言っておいて、今度は頑張るな、か……」


「……ごめん」


言いにくい役割を京介に押し付けているのは理解していた。


それでも、京介の言葉になら、克哉は反応するかもしれなかった。


「わかった、言ってみるよ」


「ありがとう京介」


あたしはそう言い、無意識の内に腕をかいていたのだった。