☆☆☆

いくら勉強ができても、いくら本をたくさん読んでも。


現実を目の当たりにすると何も役に立たない。


大切な友人を励ます言葉さえ、あたしは持っていなかった。


胸の奥にモヤモヤとした感情が渦巻いて、全然晴れる様子はない。


こんな日でも克哉は部活熱心で、きゃぁきゃぁ騒いでいるファンの子に見向きもせずにボールを追いかけている。


あたしはそんな様子を横目で見ながらグラウンドを通りすぎた。


「今日は見学して行かないの?」


隣を歩く真尋へそう声をかける。


真尋は一瞬ビクッと身を震わせてそれから「今日はやめとく」と、力なく返事をした。


あたしはその様子を見て今の自分と重ね合わせていた。


真尋も怖いのかもしれない。


今の克哉との関係を壊すのが。


事実を確認したいけれど、確認すれば関係が壊れるかもしれない。


だからなにも行動に移す事ができない。


それは、京介に告白できないままのあたしと同じだった……。