両腕に同じようなひっかいた痕がしっかりと残っていて、あたしは愕然とした。


「サナギ、おはよう」


お母さんの声が聞こえてきて、あたしは振り向いた。


あたしの表情だけですべてを察したのか、すぐに近づいて来て腕を確認した。


「どうして? 今までは右腕だけだったじゃないの」


「わからないよ。昨日の夜はまたかゆくなって、気が付いたら両腕に傷がついてたんだもん」


「とにかく、すぐに薬をぬりなさい」


そう言われ、あたしは熱を帯びた両腕を水で冷やし、2階へと向かった。


ドアの前に放置されているカバンを手に取り、部屋に入る。


1日人が入らなかった部屋はどこか寂しくて、冷たい風が吹いているように感じられた。


「サナギ、昨日は大丈夫だった?」


開けっぱなしのドアの方からバラに声をかけられてあたしは振り向いた。


いつから起きていたのだろう?


バラはすでに制服に着替えをしていた。


「ダメだった……」


そう答えるとバラは眉を下げて「そっか」とだけ言い、階段を下りて行った。