─Ikuto


「郁人!」


後片付けをしていると後ろから呼ばれる。


「香」


俺は香に片手を上げる。


「明日、空いてないかな?」


香が俺の顔をのぞき込む。


「明日?」

「うん。明日」

「明日は先約あるんだ。ごめん」


片付ける手を止めずに答える。


「なにがあるの?」

「お祭りいく」

「だれと?」

「彩香と」


俺はもう期待を持たせたくないから。
すべてに正直になることにした。


「...彩香?」

「うん。誘った」

「ふたり?」

「そうだよ」


香の顔を見ずにまだ片付けをしながら答えた。


「あたし郁人が好きなのに」

「あーなんで言うんだよ」


俺は香の頭を撫でる。


俺、振るってできないんだよ。