そうだ。帰る場所は同じでも、違う道を通って行けば良い。自販機に寄って帰れば……。

「要らない」

手首を掴まれて後ろにひっくり返りそうになった。

言葉の意味を考えるより、その行動に驚いて心臓が痛い。転ぶかと思った。

「え?」

「クッキー要らないから」

「ああ、そう、ですか」

要らないなら、仕方がない。要らないものをあげてもね。

うちに持って帰ってわたしのおやつにしようと思う。

「代わりに、撤回してほしい」

撤回という言葉に、首を傾げる。
彼の瞳はわたしを映していた。

わたし、なにか彼に対して暴言を吐いただろうか。