あまりさんののっぴきならない事情

「お前、マスターに行き先言ってったろ」
と言われ、

「あー、しまった。
 万が一、店が混んで回らなくなったときのために教えてたんだ……」
と成田は呟く。

「今度からは、あの人のいいマスターに口止めしとくことをお薦めするぞ」
と海里自ら言ってきた。

 じゃあ、つまり……とあまりが口を開く。

「恐らくですが、寺坂さんが帰り際に挙動不審で」
と言うと、寺坂がびくりとした。

 いや、別に責めているわけではないのだが……。

「支社長が、なにかおかしいと思って、室長に訊いて。
 歓迎会ということがわかったので、カフェに行って、マスターに行き先を確認したってとこですか」

 探偵のようですね、と言うと、海里は勝ち誇ったように、
「俺の子どもの頃の愛読書は、アルセーヌルパンとエラリークイーンだからな」
と言ってくる。

 いや、ルパンは怪盗ですけどね、と思いながら、勝ち誇る姿が小学生のようだな、と思っていた。

「まあいいさ。
 俺を除け者にして、みんなで楽しく騒ぐがいい」
といじけたように言い、じゃあな、と帰ろうとする。

 それこそ、小学生のように……。