あまりさんののっぴきならない事情

 秋月が、
「なに。
 支社長、私用でも電話出ないとキレるの?

 暴君ねえ」

 やっぱり結婚しなくて正解かもよ、と言ったとき、薄く個室の扉が開いていることに気がついた。

 みんなもあまりの視線を追う。

 軋む音を立てながら、扉がゆっくりと開いた。

 みんなが、ひっ、と息を呑んで見ていると、スマホを耳に当てたままの海里が現れる。

「何故、出ない……」

 ホラーかっ。

 社員である寺坂たちは、違う意味で怖かったのか、逃げかかる。

 つかつかと入ってきた海里がまだテーブルの上に置いていたあまりのスマホを取り、
「なんで出ないんだ」
と言ってきた。

 あまりは座ったまま見上げ、
「すみません。
 支社長、なんの御用なのかなーと思いながら、ぼんやり眺めてました」
と素直に白状すると、海里は、

「……ぼんやり見てそうだな」
と呟いたあとで、それを投げ返してくれた。

「俺に限らず、電話かかったら、すぐに出ろ」

 社会人として、と叱られる。