あまりさんののっぴきならない事情

 レモンの風味がよくきいていて、美味しい。

 店に入ったとき、小洒落た居酒屋だなと思ったのだが、出て来る料理は、居酒屋というよりは、洒落たレストランの一品という感じだった。

 この洒落た、小洒落た、だが、兄は、
『なんで女はすぐ小洒落た店に行きたいとか言うんだ。

 小洒落たってなんだ?
 洒落てちゃいけないのか』
と面白くないことを言ってくる。

 母親に似た美しい顔をした兄だが、あのざっくり感と無神経さで、女にはモテまいな、と思っていた。

 ちなみに、兄は海里との見合い話を、
『お前にこんな話が来るなんて、二度とないぞ。
 何故、断る、無礼者が。

 とっとと嫁に行け』
と言っていた。

 あまりにうるさいので、この兄には、何故断るのか話してしまっていたのだが。

 すると、途端に、彼は深く頷き、
『さもありなん。

 そうだな。
 断れ。

 恐らく、お前の予想通りになるであろう』
と預言者の託宣のように重々しく言ってきた。

 まあ、そんな失礼な兄はともかく、此処の料理は美味しい。