あまりさんののっぴきならない事情

「秋月さんなんかはご存知だと思いますが。
 私は、もともと土木作業員で。

 今の支社が建つとき、視察に来ていた支社長の目の前に鉄骨を落としてしまったんです」

 ひいいいい。

「いや、足場が崩れたせいだったんですけど。
 全ての罪を押し付けられて、クビになりました」

 そりゃ、社長の息子を殺しかけたわけだから。

 誰かに罪をなすりつけなければ、と建設会社のお偉いさんたちは思ったのだろう。

「ところが、それを知った支社長が私を拾ってくださったんです」

 ちなみに、今、秘書室の前辺りに入っている鉄骨です、と今、そこにあるように指差してくる。

 ひい……。

「そ、そうだったんですか。
 いや、いい秘書さんだと思いますよ」
と言うと、いや、あんた今向いてないって言ったじゃん、という顔を秋月がする。

「支社長に忠誠心が厚いのがいいと思います」
と言うと、

「ありがとうございます。
 南条様にそう言っていただけると」
と恭しく寺坂が言ってくる。

「で、結局、あんたは何者なのよ」
と秋月がこちらを見て言ってきた。