あまりさんののっぴきならない事情

 まあ、この人に、じゃあ、貴女、ファミちゃんね、と言われたら、誰も逆らえないよな、と思った。

 そのとき、息を切らした寺坂が到着した。

「遅くなりまして」

「おー。
 イケメン、まあ、座りなさい」
と秋月は機嫌がいい。

 いや……寺坂さん程度のイケメンでは気に入らないと言ってましたよね、と思ったのだが、酔っ払いはどっちでもいいようだ。

 その後、酔った秋月は、……いや、既に酔っていた気もするが、寺坂に絡み始めた。

「寺坂っ。
 何故、結婚しないっ」
と大きな寺坂の肩を抱き、久しぶりに会った小学校の恩師かなにかのように、説教し始める。

「はあ、相手が居ないので……」

 慣れているらしい寺坂は、曖昧に笑いながら言っていた。

「そうか。ファミ子はどうだ」

 ファミさん、名前が変わっています……と思いながら見ると、桜田はグラスを手にしたまま、いつものように俯き、少し赤くなっていた。

 おやおや。
 もしかして、ファミ子さんのために寺坂さんを呼んだのだろうか、と思っていると、今度は、
「あまりはどうだ?」
と言い出した。

 特にそういうわけでもなかったようだ……。