あまりさんののっぴきならない事情

 



 怪しい……。

 まだ帰り支度をしていた海里は、寺坂が消えたドアを見つめていた。

 だいたい、隠し事のできない男だからな。

 それで雇っているのもあるのだが。

 それにしても、あの様子はなにかある。

 忠誠心厚い寺坂にそれを翻させることが出来るのは……。

 ……秋月さんか?

 室長では無理だし。

 そもそも、室長がそんな指示を出しそうにはないし。

 他には思い当たらない。

「怪しいな……」
と口に出して呟きながら、まだドアを見つめていた。