あまりさんののっぴきならない事情

「なんでも美人とつけるのはよくない傾向だな」
という声が背後からした。

 振り返ると、海里が立っていた。

「美人すぎるなになにとか、綺麗すぎるなになにとかの名称もどうかと思う」

 あまりを指差し、
「少なくとも、これは美人じゃないだろ」
と言ってきた。

「美人ってのは、もっとこう、落ち着いた人のことだ。
 秋月さんとか、桜田とか」

 あら、と二人が嬉しそうな声を上げる。

「……そうですね。
 大崎さんとか」
と意識はしていなかったのに、なんとなく低く怨念のこもった声で言ってしまった。

「大崎、関係ないだろ」
と言ったあとで、ちょっとの間のあと、海里は、

「なんだ今のは。
 妬いてるとか?」
と訊いてくる。

「そっ、そんなこと言ってないじゃないですかっ。
 ところで、パンはどうでしたっ?」
と早口に訊くと、

「駄目だな」
と言う。