あまりさんののっぴきならない事情

 もう帰れ、と言うと、
「まあ、また来るよ。
 あまりが珈琲、追加持ってこいって言ってたから」
と成田は言う。

「下僕か」
と言うと、

「うるさい。
 じゃあな、ストーカー」
と言われた。

 成田は外に居た寺坂にだけは、丁寧に挨拶して去って行った。

 あまりを好きだとか。
 そんなんじゃない。

 ただ、カフェで見かけたとき、写真と同じに、楽しそうに笑っていたのに、俺の顔を見た途端、強張りやがったから腹が立っただけだ。

 シナモンロールとクロックムッシュは美味しかったが、選んで運んで来たのが成田というのが、なんかこう、納得いかないところだった。

 ……なんのために、お前を雇ってると思ってるんだ、あまり。

 いや、別に、あまりを好きだとか、そういうのではないんだが……。