あまりさんののっぴきならない事情

 




 確か販売は、総務のフロアだったよね、と思いながら、あまりは下の階へと下りた。

 すると、廊下の途中、少し広くなっていて、ベランダに出られる場所に女子社員が群がっていた。

「知ってますー。
 私、ときどきお店、行ってますよ。

 此処から結構近いですよねー」

「私も、いつもパン買いに行ってるんですよー」
と言う女性にたちに囲まれているのは、案の定、成田だった。

 頭ひとつ出ている成田は、女性の群れの向こうから、こちらに気づき、
「あまり」
と呼んでくる。

 い、今呼ばないでください、なんとなく……と思っていると、案の定、数人の女性に鋭い目で見られた。

「売るのお前だろ。
 さっさと手伝え。

 僕はもう戻らないといけないから」
と長机に白いテーブルクロスをかけながら成田は言ってくる。

 はい、と言って手伝おうとすると、何人かが、
「えーっ。
 帰っちゃうんですかー?

 成田さんが売るのなら、買おうと思ってたのにー」
と騒ぎ出した。