あまりさんののっぴきならない事情

 時計を見、
「もうすぐ、成田が来るな。
 無駄話はせず、俺に、昼に良さそうな、なにか軽いものを持ってこい」
と命じてきた。

 ほんと王様みたいな支社長様だな、と思いながら、
「軽いものですか。
 今日、なにが届くかよくわからないんですけど。

 適当に見繕ってきます。
 甘いものはお嫌いなんですよね?」

 そう聞いたので、羊羹も一切れしか持ってこなかったのだが。

 ちなみに、我々は三切れずついただきましたが……と思っていると、
「別に嫌いではない。
 好んで食べないと言うだけだ。

 糖分も取らないと頭の回転が悪くなるからな」
と海里は言う。

 そ、そうだったのか。
 じゃあ、一応、支社長だから、今度は二切れは持ってこようかな、と思いながら、

「で、では、行ってまいりますっ」
と大きく頭を下げ、出て行こうとした。

 だが、
「待て」
と止められる。

 海里はこちらを見つめ、
「……無駄話はするなよ」
と念押しするように言ってきた。