あまりさんののっぴきならない事情

「はい。
 皆さん、良い方ばかりです」
と言うと、まあ、秘書室はな、と言われる。

 秘書室以外には、なにがあるんですか~、と思っていると、
「お前は、他の部署とはそう関わりはないから大丈夫だろう」
と言ってくる。

「なにかあったら言ってもいいぞ」
と言うので、

「なにをですか?」
と言うと、

「お前が俺の見合いを断った相手だって話をだよ」
と言ってくる。

「いや……見合いを受けたのならともかく、断ったのでは、まったく印籠にならないと思いますが」
と言ってしまい、

「印籠?」
と問い返された。

 つい、さっきの秋月の『ご隠居』発言から、頭が水戸黄門になっていたのだ。

 断った話では、黄門様の印籠のように振りかざしたところで、
「……で?」
と言われて終わりだろうと思うのだが。

 だが、海里は、
「断ったにしても、俺と見合いするくらいの家の娘だとは伝わるだろ」
と言ってくる。