あまりがお茶運んで支社長室に行くと、寺坂が出迎えてくれた。
「こっちは寺坂さんのです」
と羊羹が多めに乗った方を差し出し、
「秋月さんからです。
支社長には、ご内密に」
と小声で言うと、甘党らしい寺坂は笑う。
寺坂が奥の扉を叩くと、海里の声で返事があった。
そのよく響く声に、なんとなく、どきりとしてしまう。
「失礼します」
と寺坂に扉を開けてもらい、一礼して中に入った。
後ろで扉が閉まると、給湯室に、包丁を持った秋月と閉じ込められた以上の緊迫感があった。
海里がこちらを見、
「どうだ。
まともにお茶を淹れられたか」
と訊いてくる。
いや……まともに淹れられないと思ったのなら、何故、私を雇いましたか? と思いながら、お茶出した。
一口飲んだ海里が、
「美味いじゃないか」
と驚いたように言ってくる。
いや、だから、上手く淹れられない思っているのなら、何故……と思っていると、
「どうだ。
秘書室で上手くやってけそうか」
と海里は問うてきた。



