あまりさんののっぴきならない事情

 



 三人で秘書室から繋がっている給湯室に入ると、ファミちゃんがドアを閉める。

 密室になって、なんか怖いな、と思っていると、奥に入った秋月が、下の棚から、ぎらりとよく研がれた包丁を出してきた。

 モップじゃなくて、包丁っ! と固まっていると、秋月は、コップのある小さな茶箪笥から、よく見る包装紙の包みを出してきた。

「ちょうどよかったわ。
 さっき、お客様が持ってこられたのよ。

 貴女、羊羹好き?」
と訊かれる。

「は、はい」

 特にその、とらやの新緑、が好きなんですが、と三本セットのそれを見ながら思っていると、
「うちの男性陣は、寺坂さん以外、甘いものはあんまり食べないから、よく余るのよ。
 総務に分けたら、今度は足らないしね」
と言いながら、羊羹を切り分け始める。

 残念ながら、あまりが好きな抹茶のではなかったが。

「ちょっと一息、つきましょうよ。
 此処には男の人たち入ってこないから」
と秋月は言う。