あまりさんののっぴきならない事情

「……は、離してください」
と握ったままの手を見下ろし、あまりが言うと、

「そうだな。
 じゃあ……、スペイン語で言ったら離してやろう」

 そう言って、海里は機嫌良く、秋月にからかわれている寺坂たちの方を見ていた。

 恥ずかしくはあるが、海里の大きな手に握られていると、なんだか安心する。

 そうか。
 うん。

 知らなくてよかったかもな、スペイン語……とちょっと思ってしまいながら、あまりは俯き、ずっと手を握られていた。

 新幹線はトンネルを通り、真っ暗になった窓に海里たちの姿が映る。

 楽しげなその姿を見るあまりの顔も、照れながらも笑って、映っていた――。


              

                            完