あまりさんののっぴきならない事情

 まっすぐ前を見て言うと、横の海里が、ぼそりと言ってくる。

「どうしようかな」
と。

 ええっ?
 此処へ来て迷うとかっ、と思って振り返ると、海里は、

「いや、そういう意味じゃない」
と難しい顔をして言う。

「どうしようかな。
 お前のプロポーズの方が熱烈だ、と言いたかったんだ」
と言う。

「え、プロポーズですかね?  今の」

 プロポーズだろう、と海里は笑う。

「そうですか?」

 そうだ、と言いながら、そっと膝の上にあるあまりの手に海里はその手を重ねてくる。

 赤くなって俯くと、後ろで秋月が言っていた。

「ほら、この二人みたいに、人前でも、しゃあしゃあと手をつなげるようにならないとー」

 どうも、照れ屋の寺坂に向かって言っているようだった。

 ひい、と顔を赤らめ、手を外そうとするが、外れない。

 海里は暴れる自分を面白がるように、更にガッチリ握ったまま、笑ってこちらを見ていた。

 秋月が身を乗り出し、寺坂たちと話し出した隙に軽くキスしてくる。

「ま、このくらい出来ないとな」
と言って、座り直した海里は笑う。