「海里さん、席変わりますよ」
とまた窓側の席を譲ってくれていた海里に言うと、海里は前を見たまま、難しい顔で、いや、いい……と言う。
この人はなんで機嫌が悪いのかな? と見ていると、海里は、それに気づいたらしく、
「いや、不機嫌なんじゃない」
と言ってきた。
「この旅で、お前に言いそびれたことがある気がするからだ」
「なんですか?」
と言うと、海里は少し迷いながらも言ってきた。
「俺は、この旅で、お前にプロポーズしようと思ってた。
……秋月さん、盗み聞きはもう少し、そっとやってください」
とあまりの席の背もたれから顔を出し、聞いている秋月に海里は言う。
はいはい、と秋月はとりあえず着席したが、もちろん、聞こえてはいるだろう。
というか、この座席と座席の僅かな隙間から覗いていそうな気がして、ちょっと怖いのだが……。



