あまりさんののっぴきならない事情

 そのまま少し、しょうもない話をしていたら、あまりは、エスペラント語の本を持ってきたという。

「この間、語彙不足を痛感しましたので」
と言うので、

「いや、お前。
 そうそう旅先で使う機会もないだろうよ。

 海外じゃないんだから」
と言ったあとで、

「じゃあ、少ししゃべってみろ」
と言うと、あまりは、

「Mi havas internacian stirlicencon.」
(私は国際免許証を持っています。)
と言ってきた。

「また例文か」
と言うと、

「いえ、ほんとに持っています」
と言う。

「……なんでだ。
 お前、海外行かないんだろう?」
と言うと、

「おにいちゃんが申請しに行くとき、ひとりじゃ嫌だと言って、私を引きずって行ったんです」
と言う。

「お前も新――」
と言いかけ、あまりは言葉を止めた。

 新――?

 お前も新婚旅行のときとか居るかもしれないだろ、とか?