「もういい?」
あ、はい。
着替えました、と言うと、大崎はカーテンを開ける。
最初に見せてもらったベージュのスーツだった。
「あら、素敵。
これ、いいんじゃない? 海里」
大崎に言われた海里は、スマホから、チラと目を上げ、
「いいんじゃないか?」
と言ったあとで、鳴り出したスマホを手に店の隅に行く。
「落ち着かない男ね~。
あんなのと結婚しなくて正解よ」
と大崎が言ってきた。
ははは、と苦笑いしていると、靴を履いて外に出たあまりの後ろに大崎は回る。
店のネックレスをかけて見せてくれながら、後ろから顔を近づけ、
「でもね」
と声を落として言ってきた。
「もし、海里があんたを望むなら、断ったら、祟るわよ」
ひい、とあまりは固まる。
にやりと笑った大崎の高い鼻は魔女のワシ鼻みたいに見えなくもない。
怖いよ……と思っていると、大崎は笑い出す。



