駅に着くと、 「すみませんー。 こっちですー」 と手を振るものが居る。 ん? 何処かで見たな、と海里が思っていると、そのタクシーの前に立つ男は、帽子を脱いで頭を下げる。 「いつぞやはお世話になりました。 子ども、無事に産まれましたよー」 とその帽子を振ってくれる。 あのとき、妻が破水して早産しそうだと慌てて帰った運転手、安芸(あき)だった。