「あら、時間がないんなら、海里は帰ればいいじゃない。
 こんなときに急かす男は最低よ、ねえ?」
と大崎はこちらを振り向く。

 その迫力に、あまりはただ、こくこくと頷いた。

「……なに徒党組んでんだ」

「女はさ。
 どれにしようかな? あれにしようかな? とか考えてるときが楽しいの。
 ねえ?」
とまた振り向かれ、頷くと、海里は、こちらを見、

「お前は操り人形か。
 首に糸でもついてんのか」
と言ってくる。

「いいから黙ってなさいよ。
 このお嬢ちゃん、たぶん、選ぶの早いわよ。

 ねえ?」
と言われ、また頷く。

 ……早く選ばないと、二人に殺されそうだ、と思っていると、大崎は、
「これなんかどうかしら?」
とベージュのスーツを見せてきた。

 色は落ち着いているが、形は大人っぽすぎるというほどでもない。

 これなら似合うかな、と思っていると、
「着てみて。
 まあ、スタイルいいから、どれでも、それなり似合うとは思うけど。

 顔がちょっと幼いから、あんまりセクシーなのはね」
と言ってくる。