あまりさんののっぴきならない事情

「じゃあ、制服代みたいなもんね」
と大崎は笑った。

「ねえ、カフェって何処のカフェ?」
と問われ、海里が店の場所と名前を言うと、

「あら、素敵。
 私、よくあそこに珈琲買いに行くわ。

 男前の店員さんが居るわよね、背の高い」
と言い出した。

「成田だろ」
と海里は眉をひそめる。

「あら、お友だち?」
と大崎が訊くと、いや、そこまでじゃない、と答えていた。

 ふーん。
 成田くんか、と笑った彼女に、海里は、
「……やめとけ」
と言う。

 なんだろうな。
 大崎さんが成田さんがいいと言ったら、機嫌が悪くなったような。

 もしかして、この人、大崎さんを好きだとか?

 この大人っぽい綺麗な人を?

 じゃあ、私なんぞが見合いを断ろうと、どうでもいいではありませんか、と思ってしまう。

 ……プライドの問題だろうかな。

 それにしても、やっぱり、この人、やめておいてよかった、と思っていると、いきなり、
「おい」
と呼びかけられた。

 ひっ、と身をすくめて見ると、
「早く決めろ、時間がないんだ」
と言ってくる。