あまりさんののっぴきならない事情

 長身ですらりとした美女だ。

 顔も目も少し細すぎる気がしたが、この店に合った品のいい美人だ。

「可愛いお嬢さんね。
 って、誰、これ?」
とあまりを見て笑いながら、気安く海里に話しかけてくる。

 海里は、
「俺を振った女だ」
と言い、店内を見回しながら、

「うちの会社に合うようなスーツを五、六着見繕ってくれ」

 ああ、一応、こいつの意見も聞いてな、と付け足して言う。

 いやいやいやいや。
 振ったって。

 見合いというものを断っただけじゃないですか。
 貴方に会う前に~っ!

「優しいのね」
と笑う彼女は、大崎(おおさき)というネームプレートをつけていた。

 どうやら、店長のようだ。

「自分を振った女に服買ってやるの?
 っていうか、なんで、あんたの会社に合うような服?」
と問われた海里は、

「俺と結婚したくないからって家出したらしい。
 そこのカフェで働いてるのを見つけて、捕獲したんだ。

 うちで二週間雇うことにしたから、こういうピラピラのワンピースとかじゃない服、揃えてやってくれ」
と言う。