あまりさんののっぴきならない事情

「なにか目標があって、ケンブリッジに入られたのではないんですか?」

「いや、単にその頃、親の仕事でイギリスに居たから。
 目標も定まらないまま、大学に行けばなにかあるかな、と思ってたんだけど」

 うーん、と首を傾げる。

「自分の好きな勉強を専門的に出来るのは楽しかったよ。
 でも、そこから仕事に結びつかなかったっていうかさ、自分の中で」

 大学に残ることもせずに、結局帰ってきた、と言う。

「でも、ああやって、バリバリ働いてる海里を見てると、ちょっと羨ましいっていうか。

 最初の頃、海里が居るのわかってたのに、あまりに注文取りに行かせたことがあっただろ。

 あれ、商談で来てたらしい海里の前に、今のままの自分で立つのが嫌だったっていうか。

 いや、カフェの店員が嫌だって言うんじゃないんだけど。

 自分の心が定まってないままって言うのがなんだか嫌だったんだよ。

 でも、今思えば、あのとき、あまりを行かさなかったら、あまりは海里と出会ってなかったわけだよね」