あまりさんののっぴきならない事情

「でも、手慣れすぎていますっ。
 こういうの、初めてじゃないですよねっ?」

「初めてではない」
と海里は認めた。

「だが、誰とも付き合ったことはない。

 好きなのはお前だけで。
 俺の初恋はお前だ」

 そう言ったろう、と言ってくる。

 いや……余計、話がおかしい感じなんですが、と思っていると、
「考えてみろ。
 この歳で今までなにもないとかないだろ?

 過去のない男を探したいのなら、幼稚園にでも行け」
と自分とたいして変わらない発想で言ってくる。

 そして、ん? という顔をしたあとで、海里は相好を崩した。

「なんだ。
 妬いているのか? あまり」

「ちっ、ちち、違いますよっ」

 海里に乗られたまま、あまりは慌てて手を振る。

「照れるな。
 大丈夫だ。

 お前は俺を好きなんだ。

 そうじゃなきゃ、酔っていたからって、あんなことするはずないだろう?」
と教え諭すように言ってくる。

「それともなにか?
 お前はどんな男ともああいうことをするような女なのか?」