あまりさんののっぴきならない事情

 ……いや、一連の行動を思い返すと、とても紳士的とは思えないんだが、と思いながら、風呂を出ると、ラグの上のテーブルがなくなり、そこに布団がふたつ並べて敷かれていた。

「いやいやいや」
とあまりは、海里が風呂に入っている間に、二つを引き離す。

 だが、トイレに行って戻ってくると、また引っついていた。

「いやいやいや」
とまた離してみた。

 そのうち諦めたのか、海里が、
「まあ、どっちでもいいか」
と言い出した。

「……そうですか。
 では、おやすみなさい」

 偉くあっさりだな、と思いながら、海里がラグの上を譲ると言ってくれたので、あまりは、そちらの布団に、海里はキッチンの布団で寝た。

 キッチン、寒くないかな、と思いながら寝返りを打つと、
「今、キッチン寒くないかなと思ったろう……」
という声が、耳許でした。

 ひっ、とあまりは息を呑む。

 サトリが居ますよっ、と思ったのだが、考えを読まれる以前の問題があった。

「なっ、なんで、此処に居るんですかっ」
と布団を跳ね除け、起きようとしたが、海里の大きな手で口を塞がれ、布団に押し戻される。