あまりさんののっぴきならない事情

「見えなくても気配でわかりますよ」
と言うと、

「気配なら消す」
と言う。

 忍者か。

「動いたら、手が当たったりして、人が居るってわかりますし」

「じゃあ、目隠しして、手も縛れ」

 頭の中で、目隠しされて、手を縛られて、湯船につけられている自分を想像してみた。

「あのー……。
 なんだか、どんどん貴方の思うツボになってってる気がするのは気のせいですか?」
と問うてみたのだが、海里は、

「気のせいだろう」
と言い切る。

「ともかく、お前はもう俺と結婚するしかないんだ。
 俺に汚されたキズモノだからな。

 しょうがないから、我慢してもらってやるよ」
と言い出した。

「あっ、なんなんですかっ。
 その言い方ーっ」
と揉めた挙げ句、風呂には一緒に入らない、手は出さない、という条件で、結局泊めることになってしまった。

 ……おいたをして来ないように、海里さんを縛らなければな、と本気で、紐を探してみたが、ゴミを縛る麻紐しかなかった。

 これで縛ると痛そうだな、とキッチンにしゃがんで、棚の中のそれを見つめていると、
「どうした。
 それで縛って欲しいのか」
と言われたので、隠しておいた。