あまりさんののっぴきならない事情

 ええっ? と言うと、
「普段、汚れが落としきれなくて、困ったわ、とか思ってるんだろ。
 その悩みが俺を一晩泊めるだけで解消されるんだぞ」
と強引なテレショップのように言ってくる。

 海里は、少し湯船に水をかけ、いつもあまりが使っているスポンジでこすって見せた。

「ほんとだ、すごいっ!
 みるみるうちに汚れがっ」

 叫んでしまい、自分が、
「テレショップか」
と言われて、後頭部をはたかれた。

 いや、本気で言ったんですが……、と思っていると、海里は、
「な? 男手があるっていいだろ?」
と恩着せがましく言いながら、そのまま風呂を磨いてくれる。

 あまりは、側にしゃがんでそれを見ていた。

 おお、すごいピカピカだ、と思いながら、飽きもせず眺めていると、ふいに海里が言ってきた。

「結婚しようか」

 ええっ? 今っ? と振り返る。

「風呂掃除目当てでいいぞ」
と海里は笑いながら立ち上がり、シャワーで湯船を流し始めた。

「お前は風呂掃除目当てに結婚しろ。
 俺はお前目当てに結婚する」

 なんか私がすごい人でなしのように聞こえるのですが……。