あまりさんののっぴきならない事情

 ともかく、俺は今日、此処に泊まるからな、と海里は言い出す。

「えーっ。
 そんなこと言うのなら、二度とうちには入れませんよ」
と言うと、

「……抵抗してるわりに、まだ、入れてくれる気あったのか」
と呟いたあとで、

「明日入れてくれなくてもいいから、今日は泊まる。
 篭城してやる」
と言って、風呂場に行こうとする。

「いやいやいや、待ってくださいっ」
とその腕をつかむと、

「そうだ。
 一緒に風呂に入るか」
と言ってきた。

 そして、風呂を覗き、
「一見綺麗にしているように見えて。

 見ろ。
 女の力では落としきれない水垢が」
と湯船を示して言ってくる。

「あ、ほんとだ」

 毎日洗剤は使いたくないので、普段はこするだけで落ちるとかいうスポンジを使っているのだが、やはり、腕力がないせいか、いまいち落とし切れていない。

「俺が掃除してやろう」

「えっ、いいですよっ」

「その代わり、風呂に入って、泊まって帰るぞ」