あまりさんののっぴきならない事情

 ……可愛いな。

 顔も可愛いが、言動もなんとなく可愛い。

 如何にも良家のお嬢様という感じだが、何処か抜けている。

 こんなので、カフェの店員とか出来るのか? と思っていたのだが、不器用ながらに一生懸命やっているので、客に受けはいいし。

 意外に頭の回転は速いので、ぎこちなくも、段取りよく作業が進められるようになっていて、今では結構助かっている。

 めんどくさい客に当たって気分の悪いときも、同じような客に当たっても、聞いているのかいないのか、苦笑いでぺこぺこ謝っているあまりを見ているとなんだか和むし。

 ……明日から、あまり、居ないのか。

 一日中居ないわけではないようだが。

 なんだろうな、この喪失感。

「あまり」
と呼びかけると、はい、とこちらを見る。

「いじめられたら、すぐに帰ってこいよ」
と海里を横目に見ながら言うと、

「……その言い方だと、俺がいじめるみたいなんだが」
と言っていたが、いや、こいつはわからない、と思っていた。