「美味しいですね。
 幸せです。

 人類は美味しいものを食べながら語るために産まれてきたんじゃないかと思います」
と言うと、

「まあ、あながち間違ってはいないかな」
と海里は莫迦にせずに言ってくる。

「もうひとつ付け加えるべきだが。
 人類は美味しいものを食べながら、最愛の人と語るために産まれてきたんだ」

 誰が最愛の人なんですか、と思いながらも呟いた。

「最愛の人か。
 あんなに好きでも別れちゃうってことあるんですね……」
と大崎を思う。

「大崎さん、ほんとにお姉さんがお好きなんでしょうに」

 おかしな方向に突っ走ってしまうほど。

「あんな風に愛されてみたい気もします」
と言って、

「本気か?」
と言われてしまった。

 いや、方向性は間違っているかもしれないが、大崎の麻里子に対する深い愛情は伝わってくる。

「あいつ、麻里子にベッタリだったからな。
 飽きられたんじゃないか?

 まあ、俺は今は、……飽きられるほど側に居てみたいかな」
と言って、こちらを見る。

 な、何故、今、見るのですか。

 そ、そらしてください……っ。
 そらせませんっ。

 私からは、目をそらせませんっ。