あまりさんののっぴきならない事情

 




 あまりが着替えに行ってしまったので、成田は店へと戻る。

 特にスタッフルームに用があるわけではなかったからだ。

 すると、海里はもう来ていて、マスターと話していた。

「早いぞ、犬塚。
 終わってすぐに帰れるわけじゃないんだ」
と言ってやると、

「ちょうど時間が空いたんだよ」
と言ってくる。

 あまりとなにをするつもりなのか知らないが、用事が済んだら、また会社に戻るようだった。

「……お前、なに企んでるんだ?」
と訊くと、企む? と呟いたあとで、

「まあ、社内で美味しいお茶を飲めるようには企んでるが」
と呑気なことを言う。

「そんなことじゃないだろ」
と言ってやると、海里は少し考え、

「ちょっと確かめたいことがあるんだよ」
と言ってきた。

 ちょうどあまりがやってくる。

 私服のシンプルなワンピースに着替えたあまりが、なに話してるのかなーという顔で、ひょいと覗く。