あまりさんののっぴきならない事情

 



「おっ、お疲れ様でしたーっ」

 仕事を終えたあまりは、急いでカフェから出る。

 海里が来ると言った時間までは、かなりあったが、落ち着かなかったからだ。

 帰り際、何故か成田が持たせてくれた防犯ブザーを握り、通りに出ると、パッタリ見知った顔に出会ってしまった。

 相手はすぐに呼びかけてくる。

「あら、南条あまり。
 どうしたの?」

 大崎だった。

 スレンダーな身体で、大人にも似合う細身のジャンパースカートを着こなしている。

 落ち着いた印象のネックレスもおよそ自分には似合いそうにないものだった。

 うっ、格好いい。

 思わず、足を止めて眺めてしまうと、大崎はニヤリと笑い、
「何処行くの? 海里と待ち合わせ?」
と訊いてくる。

 その様子に、やはり、この人、海里さんとはなんにもないのかな、と思う。

 ただ面白がっている風に見える。