あまりさんののっぴきならない事情

「でもまあ、楽しそうには淹れそうだからな」

 どうやら、あまりの仕事ぶりをずっと窺っていたらしい。

 ぎこちないながらも一生懸命やっていることが評価されたようで、ちょっと嬉しかった。

「それと、昼休み、珈琲やパンをうちの会社で販売してもらうことになったから」

 えっ?

「マスターのために頑張って売れ。
 ……ま、お前が淹れたお茶より、そっちの方が喜ばれるかもな」

 じゃ、と行こうとした海里は振り返り、
「何時に終わるんだ?」
と訊いてきた。

「五、五時半ですけど」
と言うと、

「じゃあ、その頃、ちょっと寄る。
 ちょうど時間が空いてるから」

 帰らずに待て、と勝手に言って去って行った。