おかしい。
明らかに挙動不審だ。
成田は海里と出張してきたというあまりを観察していた。
目が泳いでいるのは、いつものことだが、口許が強張っているし、動きが硬い。
……妙だな、と眺めていると、他にもあまりを見ている人間が居るのに気がついた。
海里とは離れたテラス席に座っている若いスーツ姿の男が、スマホを見るふりをしながら、時折あまりを窺っている。
なんだろう、あの男。
あまりに気があるのだろうか?
可愛い店員につきまとう客はたまに居るので、普段から気をつけてはいるのだが。
「はい、犬塚くんの珈琲」
とマスターがあまりに珈琲を渡す。
あまりはそれを受け取り、ギクシャクした動きで運んでいった。
あんな人形、見たことあるな、と思う。
ああ、教科書とかに載ってる、江戸時代のお茶を出すカラクリ人形。
次は矢でも放つだろうか、と誰かに操られているような動きで珈琲を運ぶあまりを眺めていた。



