あまりさんののっぴきならない事情

 



 月曜日。

 気持ちのいい朝だ。

 そのわりに気分は落ち着かないが。

 あまりはカフェで外のテーブルを拭きながら、空を見上げ、溜息をつく。

 早く会社に行きたいような、行きたくないような。

 ああ、お腹が痛くなってきたっ、と思い、視線を下げた瞬間、固まった。

 腹痛の原因がそこにトレンチコートを着て立っていたからだ。

 悲鳴を上げて逃げ出したくなったが、店員がそんなことしちゃ駄目だろうという理性が働き、なんとかその場に留まる。

 だが、布巾を握り締めてフリーズしていると、海里は、今、あまりが拭いていたテーブルにつき、こちらを見上げて言ってきた。

「おい、店員」
「はっ、はいっ」

「メニューは?」

「ははは、はいっ」
と叫んで、脱兎のごとく戻ろうとすると、

「待て」
と言われた。

「やっぱりいい。
 珈琲で」

 はいっ、と言って、あまりは一度止めた足でまた駆け出した。

 なな、なんで早朝から此処に居るんですかっ。