あまりさんののっぴきならない事情

 このべろんべろんな状態で、肩など組んで校歌を歌ったついでに、人の結婚を決めやがったか。

 この写真で笑っている、この次の瞬間かっ? などと思いつつ、凝視していたので、よく覚えている。

「子どもの頃、俺にお茶を淹れさせてたんだよな。
 まずいとわざわざ流しに行って、ザバッと捨てやがる。

 気持ちが入ってないとか言って。
 子どもだから、さっさと用事は済ませて遊びたいよな」

「えっ。
 遊んだりとかしてたんですか?」
と言うと、妙な顔で見られた。

「ずっと勉強してるのかと思ってました」

「……どんな偏見だ。
 効率悪いだろうが」
と言われてしまう。

 まあ、そうですよねー、と苦笑いして聞いていると、
「でも、美味しいときはさ、満足そうに頷くんだ。

 なんて言うんだろうな。
 こう、労力支払って、仕事をやり遂げて、お客様を満足させたときの快感をあれで覚えたというか」
と海里は語る。

 なるほど。
 将来を見越しての非道な行いだったか。