あまりさんののっぴきならない事情

 肉体派すぎるせいか。

 ちょっとヤクザっぽく見えなくもない寺坂だが、応援したくなる純情さだ。

「社長はあまりさんと出かけられてどうでした?」
と笑顔で問うてくる寺坂に、

「うん。
 ……ちょっと帰りそびれて、泊まってきたんだが」
と歯切れ悪く言うと、

「えっ。
 お二人でですか?」
と訊き返された。

 それはそれは、と言われたが、
「いや……それが結局、なんだかよくわからない感じで」
と答える。

 二人で一夜を過ごしたはずなのに、何故か、前より、あまりを遠く感じていた。

「なんせ、あまりだからな」
と言うと、あまりをよく知る寺坂は、ああ、と苦笑いする。

「でも、きっと、あまりさんは、支社長のこと、お好きですよ」

 ……たぶん、そうだと思うんだが。

 あの女、あんまり押し過ぎると、カメに乗って何処かに逃亡してしまいそうだからな。