なに俺を無視して熟読してるんだ。

 初めての夜を過ごしたあとのカップルは、新幹線で、人目につかない程度には、そっと手を握ったりとか、いちゃついてもいいものなんじゃないのか、世間的にはっ。

 まあ、こいつ、カップルだとは思ってないだろうからな、と海里は、あまりを横目に見る。

 だが、あまり。

 冷静に考えろ。

 お前のような女が幾ら酔っていたからと言っても、嫌いな男にいいようにされるはずないじゃないか。

 だからと言って、いや、お前、俺のこと好きなんだろ? と真正面から言ってみても、こいつのことだ。

 逆にショックを受けて、またカメの甲羅を磨きに行ってしまうに違いない、と思っていた。

 しょうがない。

 一夜明けて、ようやく卵から孵ったヒナみたいなものだから。

 初めて外気に触れて、ぷるぷる震えてるのを見ていよう。

 下手に手を出したら、ショック死するかもしれないからな、と思い、眺めていた。