あまりさんののっぴきならない事情






 一見、普通だな、と海里はあまりを眺める。

 二人で新幹線に乗ったあと、駅で買った旅行雑誌をあまりは真剣に読んでいた。

 ……何故、旅の帰りにそれを買う。

 俺とまた旅に出たいとか?

 ……なさそうだな。

 本を読むから通路側でいいというあまりは、昨日、自分がしたように、一個席を空けて座っていた。

 昨日は真横に座るのがちょっと気恥ずかしかったから、間を空けてしまったのだが、今日は別に側に座ってもよかったんだぞ、あまり。

 本当に記憶から消し去ったんじゃあるまいな、とまったくこちらを見ないあまりを見ていた。

 窓際を譲ってもらったが、ほとんど外など見ていない。