あまりさんののっぴきならない事情

「嫌です。
 そんな恥ずかしいっ」
と取り返させてくれた布団を被ったまま、あまりはひとり震える。

「露天風呂は、ひとりで入ります~」
と言うと、

「……入るのは入るのか。
 結構余裕だな」
と言われた。

 いや、だって、昨日、入りそびれましたから……と言い訳のように思う。

 そのまま海里はお湯を張りに行ったようだった。

 しばらくすると、
「あまり、お湯溜まったぞ。
 先に入れ」
と言ってくれる。

 結構優しいな……と思いながらも、あまりは、もう一度、布団の中で目を閉じる。

 カメの世界に逃避しようとしたが、もうカメは頭の中に居なかった。

 お腹が空いていたのか。

 昨夜のご飯、美味しかったけど。
 今朝は、どんな朝食なのかな、とそればかりが頭に浮かぶ。

 無理やり襲われたはずなのに。

 何故だろう、呑気だな、と自分でも思ってはいた。