あまりさんののっぴきならない事情

 ただ誰にも誘われなかったから、そうならなかっただけで、実は私は悪い女なんでしょうか。

 あまりは布団を被って、顔を隠す。

「もう、おてんと様の下を歩けません。
 死にます」

 そのまま、ぐずぐず泣いていると、気の短い海里は、イラッと来たようで、
「じゃあ、死ねっ」
と言い出した。

「俺にもう一度、襲われてからなっ」
と布団を剥がれる。

「駄目ですっ、駄目ですっ」
とあまりは布団を取り返そうとする。

「そんなことしたら、舌噛み切って死にますーっ。

 舌っ」

 早口に言おうとして、

「……舌噛んでしまいました」

 いたいー、と布団の上に突っ伏していると、海里が、頭の上で、
「どうしたいんだ……」
と呟いていた。

 いや、自分でも動揺しすぎて、よくわからない。

 やがて、溜息が聞こえてきた。

「わかったよ。
 じゃあ、一緒に露天風呂にでも入るか。

 昨日入りそびれたから」
と言ってくる。