あまりさんののっぴきならない事情

 




 窓から早朝のものらしき明かりが少し差し込んでいた。

 朝だ……。

 朝ですね。

 朝だよね。

 そう思いながら、あまりは固まる。

 なんで、この人が横に居て、私の顔を眺めているのでしょうね。

 思わず、また目を閉じる。

 もう一度、カメの背中を磨きに行こうとしたのだ。

「現実逃避するな」
と頭をはたかれる。

「いや、どうやら、此処が夢の世界のようなので、もう一度、カメを磨きに……」
とぐるぐる回る頭で呟くと、……なに言ってるんだお前は、という目で見られた。

 ぼんやり夕べの記憶が蘇ってくる。

 あまりは布団を握り締め、呟いていた。

「どうしたらいいんでしょう。
 あんな恐ろしいことをしてしまうなんて。

 私はもう世間様に顔向けできません」

「待て。
 すべての人類が、その恐ろしいことをしなかったら、お前産まれてないからな?」