あまりさんののっぴきならない事情

 海里があまりを抱いたまま中に入ると、ドアが閉まった。

「……俺を好きになってみればいい」

 唇になにかが触れてくる。

 もしや、これがキスという奴なのでしょうか。

 本で読んだのと全然違っていて、なにがなんだかわからない。

 っていうか、何故、こんなことに、とぼんやり思う。

 羊羹をもらって新幹線に乗って、フランス人にぼんじゅーると言えなくて、海を求めて、山をさまよったら、カメを助けてもないのに、こんな素敵な竜宮城にたどり着いて。

 乙姫様じゃなくて、王子様が。

 ……そうです。
 王子様が私にキスしています。

 王子様、気でも違ったのでしょうか?

「……呪ってるんじゃなかったんですか?」

 少し冷静になった頭で、あまりは、そう訊いていた。

「呪ってるよ。
 俺を受け入れなかったお前を呪ってる……」

 海里はあまりをその場に下ろし、壁に押し付けるようにしてキスしてきた。

 ちょっとなにが起きているのか理解できない。