あまりさんののっぴきならない事情

「うちのお母さんも情にほだされて、あの悪魔みたいな父親と結婚しちゃって」

「泣いてるのか?」

「いや、幸せそうなんですけど。
 父親の言動を見るたび、お母さん、この人でよかったの? って思うんですよね」
と言いながら、海里のグラスに酒をそそいでやったが、あまり上手くはいかなかった。

「じゃあ、いいじゃないか。
 お前も情にほだされて結婚してみろ」

「うーん。
 でも、確かに、貴方の写真見たとき、いいなと思いましたけど。

 写真見て決めるとか、顔だけで決めたみたいなんで嫌だったんです」

「顔以外は嫌いなのか?」

「いや……最初の印象と違って、結構しょうもないこと言い出したりするし。

 たまに、莫迦なんじゃないかなーとか思ったり……」

「お前が言うなーっ」
と言われたが、

「いや、そういうところが可愛いかな、とは思います」
と本音を告げた。